「家族のかたち」はひとつではない
この記事は、養子縁組や里親制度を「不妊治療がうまくいかなかった場合の代替手段」として紹介するものではありません。これらは、家族を築くためのもうひとつの選択肢です。
治療を続けている方、治療を終えた方、治療を始める前の方 — どの段階にいても、知っておくことに意味がある制度です。「知識として持っておく」ことは、判断を迫るものではありません。
特別養子縁組とは
特別養子縁組は、法律上の親子関係を新たに作り、養親と養子が実の親子と同じ関係になる制度です。
主な要件
- 養親の年齢:原則として配偶者の一方が25歳以上
- 養子の年齢:原則として15歳未満(2020年の法改正で引き上げ)
- 婚姻関係にあること(共同で縁組)
- 6か月以上の試験養育期間を経て、家庭裁判所が審判で成立させる
普通養子縁組との違い
- 特別養子縁組:生みの親との法的関係が終了する。戸籍上は「長男」「長女」等と記載される
- 普通養子縁組:生みの親との法的関係は残る。相続関係が二重になる
里親制度とは
里親制度は、さまざまな事情で家庭で暮らせない子どもを、自治体から委託を受けて自宅で養育する制度です。法律上の親子関係は成立しませんが、子どもに家庭的な環境を提供する大切な役割です。
里親の種類
- 養育里親:一定期間、子どもを預かって養育する
- 専門里親:虐待や発達課題のある子どもを養育する(研修が必要)
- 養子縁組里親:養子縁組を前提として養育する
- 親族里親:祖父母や叔父・叔母などの親族が養育する
里親の要件
- 特別な資格は不要
- 自治体の研修を受講する必要がある(数日間)
- 家庭環境の調査を受ける
- 独身でも里親になれる場合がある(自治体により異なる)
手続きの流れ
特別養子縁組の場合
- 民間あっせん機関または児童相談所に登録・相談
- 家庭調査・面接・研修
- マッチング(子どもとの引き合わせ)
- 試験養育期間(6か月以上)
- 家庭裁判所への申立て・審判
- 養子縁組の成立
マッチングまでの期間は、数か月〜数年と幅があります。
里親の場合
- 住んでいる自治体の児童相談所に相談
- 研修の受講(基礎研修+認定前研修)
- 家庭環境の調査
- 里親として認定・登録
- 子どもの委託(タイミングは状況による)
費用について
特別養子縁組
- 民間あっせん機関を利用する場合:数十万〜100万円程度(機関により異なる)
- 児童相談所を通す場合:基本的に費用はかからない
- 2020年からあっせん機関の許可制が導入され、不当に高額な費用を請求されるケースは減少傾向
里親
- 里親手当:月額9万円程度(養育里親の場合、2024年度)
- 一般生活費:子ども1人あたり月額5万円程度が支給される
- 養育にかかる費用は公費でカバーされる仕組み
不妊治療との関係
養子縁組や里親制度は、不妊治療の「次の選択肢」として語られることが多いですが、実際には治療と並行して情報収集を始める方もいらっしゃいます。
- 治療中に情報収集だけしておくことは、将来の選択肢を広げる助けになる
- 「治療を諦めたから養子」ではなく、「家族を持つ方法のひとつ」として位置づけている方もいる
- 養子を迎えた後に自然妊娠するケースもあるが、それを期待して養子縁組を検討することは子どもに対して適切ではない
- すでにお子さんがいるご家庭でも、きょうだいとして養子を迎えることは可能。先にいるお子さんとの関係づくりも含めて、家族全員でのカウンセリングが推奨される
パートナーの方へ
養子縁組や里親制度についての話し合いは、デリケートなテーマです。「治療をやめよう」という文脈で持ち出すと、パートナーを傷つける可能性があります。
「こういう制度もあるみたい」と、あくまで情報共有として紹介し、お互いの気持ちを聞き合う場を持つことが大切です。
相談窓口
- 各都道府県の児童相談所:里親・養子縁組の相談窓口
- 民間あっせん機関:厚生労働省のウェブサイトで許可を受けた機関の一覧が確認できる
- 日本財団「子どもの家庭養育推進」:情報提供やイベントを開催
この記事のポイント
- 養子縁組と里親は、家族のかたちのひとつ
- 特別養子縁組は法的に実の親子と同じ関係になる
- 里親は自治体からの委託。研修を受ければ特別な資格は不要
- 治療中でも情報収集は可能。知ることは選択を迫られることではない
治療の終え方については治療を終える決断の記事もご参照ください。
出典
- 厚生労働省「養子縁組あっせん事業について」
- 厚生労働省「里親制度について」
- こども家庭庁「里親制度等の推進について」
