卵子凍結とは

卵子凍結とは、将来の妊娠に備えて採取した卵子を超低温で保存しておく技術です。必要なときに融解し、体外受精に用いることができます。

卵子凍結には大きく分けて2つの背景があります。

  • 医学的適応:がん治療(抗がん剤・放射線)の前に、治療による卵巣機能の低下に備えて卵子を保存するケース
  • 社会的適応:加齢による卵子の質の低下に備えて、将来の選択肢として保存するケース。「社会的卵子凍結」とも呼ばれる

近年、社会的適応による卵子凍結への関心が高まっており、自治体による助成制度も広がりつつあります。

対象年齢と推奨時期

卵子の質は年齢とともに変化します。そのため、卵子凍結を検討する場合は年齢が重要な判断材料になります。

  • 一般的に、凍結時の年齢が若いほど融解後の成績が良い傾向があるとされています。日本生殖医学会のガイドラインでもこの点に触れており、検討中の方はまず現在の卵巣の状態をAMH検査で確認し、医師と一緒に選択肢を検討してみてください
  • AMH検査で現在の卵巣の状態を把握でき、その結果をもとに医師と方針を相談できる
  • 検討中の方は、まず現在のご自身の状況をAMH検査等で把握することから始めてみてください
  • 採卵に必要な卵巣予備能(AMH値)は個人差が大きいため、検査で確認することが推奨される

なお、これらはあくまでも統計的な傾向であり、個人の状況によって異なります。年齢だけで判断せず、医師と相談のうえ検討してみてください。

採卵から凍結までの流れ

1. 事前検査

卵子凍結を実施する前に、基本的な検査を受けます。

  • 血液検査(AMH、ホルモン値、感染症検査など)
  • 超音波検査(卵巣の状態確認)

2. 排卵誘発(卵巣刺激)

月経開始後から排卵誘発剤(注射)を使用し、複数の卵胞を育てます。

  • 期間:約10〜14日間
  • 通院回数:3〜5回程度(超音波とホルモン値の確認のため)
  • 自己注射が可能な製剤もあり、毎日の通院が不要な場合もある

PCOSなどの排卵障害がある方は、排卵誘発への反応が強く出やすいため、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクを考慮した慎重な採卵計画が必要です。事前に医師へ伝えておきましょう。

3. 採卵

卵胞が十分に発育したら、経膣超音波ガイド下で採卵を行います。

  • 所要時間:15〜30分程度
  • 麻酔:局所麻酔または静脈麻酔
  • 採卵個数は年齢や卵巣の状態により異なる(数個〜20個以上の場合もある)
  • 十分な数の卵子を確保するために、複数回の採卵を行うこともある

4. 凍結保存

採取した成熟卵子を「ガラス化法(急速凍結法)」で凍結し、液体窒素(-196度)で保管します。この技術の進歩により、融解後の卵子の生存率は大幅に向上しています。

費用の目安

社会的適応の卵子凍結は保険適用外(全額自費)です。費用はクリニックにより異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。

  • 事前検査:約1〜3万円
  • 排卵誘発剤:約5〜15万円(薬剤の種類・量による)
  • 採卵手術:約15〜30万円
  • 凍結費用:約3〜5万円
  • 1回あたりの合計:約30〜50万円程度
  • 年間保管料:約2〜5万円(クリニックにより異なる)

十分な数の卵子を確保するために複数回の採卵が必要になる場合、費用はさらにかかります。

卵子凍結は妊娠を保証するものではない

卵子凍結について検討する際に、最も重要なのはこの点です。

  • 凍結卵子を融解した際、すべての卵子が使用可能な状態で戻るわけではない(生存率は一般的に80〜90%程度)
  • 融解した卵子が受精し、妊娠・出産に至る確率は、凍結時の年齢や卵子の個数によって大きく異なる
  • 凍結時の年齢が若いほど1個あたりの成功率は高くなります。30歳前後での凍結で約8〜12%、38歳以上では数%程度とするデータがあります
  • 将来使用する際には体外受精が必要となり、その費用と身体的負担が別途発生する

「凍結しておけば安心」ではなく、「選択肢のひとつとして持っておく」という位置づけで捉えることが現実的です。

自治体の助成制度

2023年頃から、社会的卵子凍結に対する助成を行う自治体が増えています。

  • 東京都:対象年齢18〜39歳、検査費用や凍結費用の一部を助成(上限あり)
  • その他の自治体でも導入が広がりつつある

助成の対象条件、金額、申請方法は自治体によって異なります。お住まいの自治体のホームページで最新情報を確認してください。

卵子凍結を検討する際のチェックリスト

  • 自分のAMH値(卵巣予備能)を把握しているか
  • 費用の総額(採卵+凍結+年間保管料+将来の体外受精費用)を理解しているか
  • 凍結しても妊娠が保証されるわけではないことを理解しているか
  • 保管期間の上限や、施設の閉院時の対応を確認しているか
  • 自治体の助成制度を確認したか

パートナーの方へ

卵子凍結を検討しているパートナーがいる場合、費用計画や採卵期間中のサポート(通院の付き添い、体調が悪い時の家事分担など)について、二人で話し合ってみてください。

まとめ

卵子凍結は、将来の妊娠に向けた選択肢のひとつです。メリットもリスクもあり、費用も決して小さくありません。十分な情報をもとに、ご自身にとって必要な選択かどうかを考えてみてください。

まずは卵巣予備能の検査から始めてみるのもひとつの方法です。お住まいの地域のクリニックはエリアから探すページで検索できます。