精液検査は男性の「健康診断」
不妊治療において、精液検査は男性側の検査の基本です。不妊の原因は男女ほぼ半々とされており、女性だけが検査を受けるのでは全体像が見えません。
精液検査は痛みもなく、短時間で終わる検査です。二人で一緒にスタートラインに立つための第一歩として、気軽に受けてみてください。
検査の流れ
採精の方法
- クリニック内の採精室で採取するのが一般的(自宅採精が可能な施設もある)
- 2〜7日間の禁欲期間が推奨される(長すぎても短すぎても結果に影響する)
- 採取した精液は30分〜1時間かけて液化した後に検査される
自宅採精の場合
- 専用の容器に採取し、体温程度の温度を保って1〜2時間以内にクリニックに持参
- 冬場は容器を内ポケットに入れるなど、温度低下に注意
- クリニックによっては自宅採精用の採精キットを提供している
検査結果の見方(WHO基準値 2021年版)
WHO(世界保健機関)が2021年に改訂した精液検査の基準値(下限参考値)は以下の通りです。
- 精液量:1.4mL以上
- 精子濃度:1600万/mL以上
- 総精子数:3900万以上
- 運動率:42%以上
- 前進運動率:30%以上
- 正常形態率:4%以上(Kruger の厳密基準)
精子の状態は年齢・体調・生活習慣によって変動します。以前の妊娠とは別に、今の状態を確認することが大切です。
これらは「この数値以上なら正常」というよりも、「自然妊娠した男性の下位5%にあたる値」です。基準値を上回っていても妊娠しにくい場合もあれば、下回っていても自然妊娠する場合もあります。
結果が基準値を下回った場合
一度の検査結果だけで判断しないことが大切です。精液の状態は体調やストレス、禁欲期間によって変動します。
- 再検査:1〜3か月の間隔を空けて、2〜3回検査することが推奨される
- 泌尿器科への紹介:繰り返し異常値が出る場合、男性不妊専門の泌尿器科での精密検査を検討
- 生活習慣の見直し:喫煙、過度の飲酒、長時間の座位、サウナなどが精子に影響する可能性がある
精液検査で分かること・分からないこと
分かること
- 精子の数、運動率、形態の概要
- 無精子症(精液中に精子がまったくない状態)の判定
- 精液量や液化の異常
分からないこと
- 精子のDNA損傷の程度
- 受精能力そのもの(精子の数や運動率が正常でも、受精がうまくいかない場合がある)
- 精巣内での精子形成の詳細
より詳しい検査が必要な場合は、精子DNA断片化検査(DFI)やホルモン検査が追加されることがあります。
「検査が恥ずかしい」と感じる方へ
採精室での採取に抵抗を感じる方は少なくありません。クリニックのスタッフはこうした場面に慣れており、プライバシーが守られた環境が用意されています。
どうしても難しい場合は、自宅採精が可能なクリニックを選ぶか、採精補助ツール(シリンジ等)を利用する方法もあります。主治医に相談してみてください。
パートナーの方へ
精液検査を受けることを提案する際、「あなたに問題があるかもしれないから」ではなく、「二人で一緒に調べよう」という姿勢が大切です。
- 「私も検査を受けたから、あなたも一緒に始めよう」と対等な立場で伝える
- 結果に関わらず、検査を受けたことを認める
- 結果が良くなかった場合、責めるのではなく「一緒に次のステップを考えよう」と伝える
この記事のポイント
- 精液検査は男性の基本検査。痛みはなく短時間で終わる
- WHO基準値は「下限参考値」であり、絶対的な基準ではない
- 一度の結果で判断しない。2〜3回の再検査が推奨される
- 基準値を下回っても、治療の選択肢は複数ある
男性不妊の全体像については男性不妊の基礎知識をご参照ください。
出典
- WHO「WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th edition」(2021)
- 日本泌尿器科学会「男性不妊症診療ガイドライン」
