不妊治療と仕事の両立は大きな課題
厚生労働省の調査によると、不妊治療経験者の約2割が「仕事との両立が困難」と回答し、そのうち約16%が退職を選んでいるとされています。通院の頻度や急な日程変更、精神的なストレス、お子さんがいる場合は預け先の確保など、両立を難しくする要因は複数あります。
しかし、近年は制度面の整備が進み、両立を支援する仕組みも増えてきています。ここでは、活用できる制度と具体的な工夫を紹介します。
不妊治療連絡カードの活用
厚生労働省が作成した「不妊治療連絡カード」は、主治医の記載をもとに、職場に通院の必要性を伝えるためのツールです。
- 厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできる
- 治療の内容やスケジュール、配慮してほしい事項を記載
- 直接上司に渡すことで、口頭で説明しにくいことを伝えられる
- 法的な拘束力はないが、企業側の理解を促す効果がある
治療内容を詳しく説明したくない場合にも、このカードがあれば「医療上の必要性がある」ことを客観的に示すことができます。
活用できる会社の制度
不妊治療に特化した休暇制度を設けている企業はまだ少数ですが、既存の制度を活用できる場合があります。
確認すべき制度
- 有給休暇の時間単位取得:半日や時間単位で取得できると通院に便利
- フレックスタイム制度:通院に合わせて勤務時間を調整できる
- テレワーク・在宅勤務制度:通院日に在宅勤務を組み合わせる
- 積立有給休暇(失効有給休暇の積立制度):治療目的で使用できる場合がある
- 不妊治療休暇・通院休暇:専用制度がある企業も増加傾向
まずは就業規則や人事制度を確認し、活用できる制度がないか調べてみましょう。
職場への伝え方
治療のことを職場に伝えるかどうかは、個人の判断に委ねられます。伝えることのメリット・デメリットを整理しておくと、判断しやすくなります。
伝える場合のポイント
- 伝える相手は直属の上司に限定する(必要以上に広めない)
- 「不妊治療」という言葉を使わなくても、「通院が必要な治療」と伝えるだけでも十分
- 配慮してほしいこと(急な休み、時間変更など)を具体的に伝える
- 治療期間の見通し(半年〜1年程度など)を共有する
- 業務への影響と対策(引き継ぎ体制など)を自分から提案する
伝えない場合の工夫
- 「定期的な通院」とだけ説明する
- 有給休暇を計画的に取得する
- 早朝診療や土曜診療を活用する
- フレックスを利用して半休を組み合わせる
通院スケジュールの工夫
不妊治療の通院頻度は治療段階によって異なります。
- タイミング法:月2〜3回程度
- 人工授精:月3〜4回程度
- 体外受精(排卵誘発中):月5〜10回程度
特に体外受精の排卵誘発期間中は頻繁な通院が必要になります。以下の工夫が役立ちます。
- 早朝診療(7時台〜)を行っているクリニックを選ぶ
- 自己注射が可能な排卵誘発剤を選択する(通院回数の削減)
- 採卵日は事前に有給休暇を確保しておく
- 移植後の安静日も考慮してスケジュールを組む
リモートワークの活用
リモートワークが可能な職場であれば、通院日に在宅勤務を設定することで両立がしやすくなります。午前中に通院し、午後から在宅勤務するといった柔軟な働き方ができると、治療と仕事のバランスが取りやすくなります。
子育てと治療の両立
二人目以降の治療では、上のお子さんの世話と通院の両立が課題になることがあります。事前に準備しておくことで、負担を軽減できます。
- 通院時の預け先を確保する(一時保育、ファミリーサポート、祖父母など)
- 子連れ通院が可能なクリニックかどうか事前に確認しておく
- お子さんの行事や園の予定と通院スケジュールを早めにすり合わせる
- パートナーと通院日のお迎え・送りの分担を話し合っておく
一時保育やファミサポは事前登録が必要な場合が多いため、治療を始める前に手続きしておくと安心です。
経験者の声を参考に
同じ状況を経験した人の声は、具体的な工夫や心の支えになります。経験者の口コミページでは、治療と仕事を両立された方の体験談も読むことができます。
パートナーの仕事との両立
採卵日の付き添い、判定日の精神的サポートなど、パートナーにも仕事の調整が必要な場面があります。上司にどこまで伝えるか、有給の使い方など、二人で事前に話し合っておくと安心です。
まとめ
不妊治療と仕事の両立は決して簡単ではありませんが、使える制度を把握し、計画的に通院スケジュールを組むことで負担を軽減できます。治療に専念するために退職する前に、まずは今の環境で活用できるリソースを確認してみてください。
