「先進医療」とは
不妊治療における先進医療とは、保険適用の治療と組み合わせて実施できる、まだ保険適用にはなっていない技術のことです。2022年の不妊治療保険適用拡大と同時に、一部の技術が先進医療として承認され、保険診療との併用が可能になりました。
先進医療の技術料は自費になりますが、体外受精の基本部分は保険が使えるため、すべて自費で行うよりも費用を抑えることができます。
ERA検査(子宮内膜受容能検査)
何を調べるか
子宮内膜が胚を受け入れられる最適なタイミング(着床の窓: Window of Implantation)を調べる検査です。内膜の遺伝子発現パターンを解析し、移植のタイミングがズレていないかを確認します。
対象となる方
- 良好な胚を複数回移植しても着床しない方(反復着床不全)
- 着床の窓がズレている可能性がある方
検査の流れ
- ホルモン補充周期で子宮内膜を準備
- 移植と同じタイミングで内膜の一部を採取(子宮内膜生検)
- 採取した検体を海外の検査機関に送付し、遺伝子発現を解析
- 結果は約2〜3週間後に判明
費用と注意点
- 費用:10万〜15万円程度(先進医療として保険併用可能な施設あり)
- 約30%の方で着床の窓にズレが見つかるとされている
- 検査自体に軽い痛みを伴うことがある(月経痛程度)
- ERA検査の有効性については、近年エビデンスに対する議論もある。主治医と相談のうえで判断を
EMMA/ALICE検査(子宮内フローラ検査)
何を調べるか
- EMMA(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis):子宮内の細菌叢(マイクロバイオーム)のバランスを調べる
- ALICE(Analysis of Infectious Chronic Endometritis):慢性子宮内膜炎の原因菌を特定する
なぜ重要か
子宮内にはラクトバチルス(乳酸菌)を中心とした細菌叢が存在し、このバランスが着床環境に影響する可能性が研究されています。ラクトバチルスの割合が90%以上の場合に着床率が高いとする報告もあります。
費用
- EMMA + ALICE セット:6万〜10万円程度
- ERA検査と同時に内膜検体を採取できるため、同時実施が効率的
タイムラプス培養
何をするか
体外受精で得られた胚を、微速度撮影カメラ付きの培養器で培養する技術です。培養器の外に出さずに胚の発育を連続的に観察できるため、従来の方法よりも胚へのストレスが少ないとされています。
メリット
- 胚の発育過程を動画で確認でき、移植に最適な胚の選択精度が向上する可能性がある
- 培養器を開ける頻度が減り、温度やpHの変動を最小化できる
- AIによる胚のスコアリング(形態評価の自動化)を行うシステムもある
費用
- 3万〜5万円程度(先進医療として保険併用可能な施設あり)
子宮内フローラ検査
EMMA/ALICEとは別に、子宮内の細菌叢を独自の方法で検査するサービスも登場しています。検査の方法や解析手法はメーカーによって異なるため、エビデンスのレベルもさまざまです。
子宮内フローラに異常が見つかった場合は、抗生剤やラクトバチルス製剤(サプリメント含む)を使った治療が行われることがあります。
費用をかける価値はあるか
先進医療は「受ければ必ず結果が出る」ものではありません。判断のポイントは以下の通りです。
- 反復着床不全の方:ERA検査やEMMA/ALICE検査が原因特定に役立つ可能性がある
- 初めての体外受精の方:まずは基本的な治療を行い、結果を見てから追加検査を検討するのが一般的
- 費用と心理的負担のバランス:「やれることはすべてやりたい」という気持ちは自然ですが、費用が積み重なることで別のストレスになる場合もある
主治医と相談し、自分の状況に合った検査を選ぶことが助けになります。「やらなかったこと」を後悔するのではなく、「相談して決めた」という安心感を持てることが大切です。
パートナーの方へ
先進医療は費用がかさむため、二人で費用と方針を話し合っておくことが大切です。「お金のことは気にしなくていい」と言うよりも、「一緒に調べて、一緒に決めよう」という姿勢が支えになります。
この記事のポイント
- 先進医療は保険との併用が可能な自費の検査・技術
- ERA検査は着床の窓のズレを調べる。反復着床不全の方が主な対象
- EMMA/ALICEは子宮内の細菌環境を調べる
- タイムラプスは胚のストレスを軽減する培養法
- すべてを受ける必要はない。自分の状況に合った選択を
体外受精の費用全体については体外受精の費用とスケジュールを、保険適用の範囲は保険適用まとめをご参照ください。
出典
- 厚生労働省「先進医療の概要について」
- 日本生殖医学会「生殖医療の必修知識」
