第三者の配偶子を使う治療とは
提供卵子(ドナー卵子)や提供精子(ドナー精子)を使った不妊治療は、自身の卵子や精子では妊娠が難しい場合に検討される選択肢のひとつです。
この選択肢について知ることは、すぐに決断を迫られることを意味しません。「こういう方法もある」という知識を持つことが、将来の選択の幅を広げる助けになります。
提供精子による人工授精(AID)
対象となる方
- 無精子症で、精巣内精子回収術(TESE)でも精子が得られなかった方
- 重度の精子異常がある方
日本の現状
- AID(非配偶者間人工授精)は、日本では1949年から実施されてきた歴史がある
- 現在は実施施設が減少傾向にある
- 日本産科婦人科学会の登録施設で実施される
- ドナーは匿名が原則だが、出自を知る権利に関する議論が進んでいる
提供卵子による体外受精
対象となる方
- 卵巣機能不全で自身の卵子では妊娠が見込めない方
- 早発卵巣不全(POI)と診断された方
- 加齢により採卵しても良好な胚が得られない方
- 遺伝性疾患の保因者で、自身の卵子の使用を避けたい方
日本の現状
- 日本国内で提供卵子による体外受精を行える施設は限られている
- 海外(アメリカ、台湾、チェコ等)で治療を受ける方もいる
- 2022年の「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」により、提供卵子で生まれた子の母は出産した女性と規定された
法的な枠組み
2022年に成立した上記法律により、以下が明確になりました。
- 提供卵子で出産した場合、出産した女性が法律上の母
- 提供精子による治療に同意した夫は、法律上の父
ただし、ドナーの匿名性や出自を知る権利(生まれた子が自身のルーツを知る権利)については、まだ十分な法整備が進んでいない状況です。
心理的なサポートの重要性
第三者の配偶子を使うかどうかの判断は、医学的な判断だけでなく、深い心理的な問題を伴います。
- 遺伝的なつながり:自分の遺伝子を持たない子どもを育てることへの気持ち
- 子どもへの告知:将来、子どもにどのように伝えるか
- 親族の理解:両親や義理の両親にどこまで伝えるか
- 社会的な視線:まだ十分に認知されていない治療法への偏見
これらのテーマについて、カウンセラーや心理士と話し合うことが強く推奨されます。多くの施設では、提供配偶子による治療の前にカウンセリングが必須とされています。
費用の目安
- AID:1回あたり1万〜3万円程度(施設により異なる)
- 国内の提供卵子プログラム:ドナーへの補償やコーディネート費用を含め、数十万〜100万円以上
- 海外での提供卵子治療:渡航費や滞在費を含め、200万〜400万円程度(国・施設による)
いずれも保険適用外です。
パートナーの方へ
この選択肢を検討する際、パートナーとの十分な話し合いが不可欠です。
- どちらか一方の意見だけで進めないこと
- 結論を急がないこと。何度も話し合い、気持ちが変わることも自然
- カウンセリングを二人で受けることを検討
この記事のポイント
- 提供配偶子による治療は、家族を築くための選択肢のひとつ
- 日本でも法整備が進みつつあるが、まだ発展途上
- 心理的なサポート(カウンセリング)が非常に重要
- 「知ること」は「決めること」ではない
治療のステップアップについてはステップアップの流れを、治療を終える決断については治療を終える記事もご参照ください。
出典
- 日本産科婦人科学会「提供配偶子を用いた生殖補助医療に関する見解」
- 厚生労働省「生殖補助医療の提供等に関する法律の概要」
