ホルモン検査は不妊治療の出発点

不妊治療では、最初の検査としてホルモン値の測定が行われることが一般的です。血液検査でホルモンの状態を調べることで、排卵の有無、卵巣機能、甲状腺の状態など、治療方針を決めるうえで必要な情報が得られます。

ホルモン検査は月経周期のタイミングによって測定する項目が異なります。ここでは、主なホルモン検査の種類と測定時期、結果の見方を整理します。

月経周期と検査のタイミング

ホルモン値は月経周期の中で変動するため、適切なタイミングで測定することがポイントです。

月経期(月経2〜5日目)に測定するもの

  • FSH(卵胞刺激ホルモン)
  • LH(黄体形成ホルモン)
  • E2(エストラジオール)
  • PRL(プロラクチン)
  • TSH(甲状腺刺激ホルモン)
  • AMH(抗ミュラー管ホルモン)※月経周期を問わず測定可能

排卵期に測定するもの

  • LH(LHサージの確認)
  • E2(卵胞の成熟度の確認)

黄体期(排卵後5〜7日目頃)に測定するもの

  • P4(プロゲステロン):排卵の確認と黄体機能の評価

各ホルモン検査の解説

FSH(卵胞刺激ホルモン)

脳の下垂体から分泌され、卵巣で卵胞の発育を促すホルモンです。

  • 正常範囲(月経期):3〜10 mIU/mL程度
  • FSH値が高い場合:卵巣予備能が低下している可能性(卵巣が反応しにくくなっている状態)
  • FSH値が低い場合:下垂体の機能低下や、視床下部性の排卵障害の可能性

FSH値が上昇傾向にある場合でも、個人差が大きく、それだけで治療の見込みが決まるわけではありません。AMH値やAFC(胞状卵胞数)と合わせて総合的に判断されます。

LH(黄体形成ホルモン)

排卵の引き金となるホルモンです。排卵直前にLHが急上昇する現象を「LHサージ」と呼びます。

  • 正常範囲(月経期):2〜10 mIU/mL程度
  • LH/FSH比が高い場合:PCOSの診断指標のひとつになる

排卵検査薬は、このLHサージを検出する仕組みです。

E2(エストラジオール)

卵胞から分泌されるエストロゲン(女性ホルモン)の一種で、子宮内膜を厚くする作用があります。

  • 月経期の基礎値:20〜60 pg/mL程度
  • 排卵前(成熟卵胞1個あたり):200〜300 pg/mL程度
  • 月経期のE2が高い場合:卵巣予備能の低下を示唆することがある

P4(プロゲステロン/黄体ホルモン)

排卵後の黄体から分泌され、子宮内膜を着床しやすい状態に整えるホルモンです。

  • 黄体期の正常範囲:10 ng/mL以上が目安
  • P4が低い場合:黄体機能不全(着床環境が十分に整わない状態)の可能性

基礎体温で高温期が短い場合、P4の測定が参考になります。

PRL(プロラクチン)

本来は授乳時に分泌されるホルモンですが、授乳期以外に高値になると排卵を抑制することがあります。

  • 正常範囲:30 ng/mL以下程度
  • 高PRL血症の場合:月経不順や排卵障害の原因になることがある
  • 薬剤(一部の精神科薬、胃薬など)の影響で上昇することもある

潜在性高PRL血症(日中は正常でも夜間に上昇するタイプ)の場合は、TRH負荷試験で確認されることがあります。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)

甲状腺機能は妊娠の成立と維持に影響するため、不妊検査の一環として測定されます。

  • 正常範囲:0.4〜4.0 μIU/mL程度
  • 不妊治療においては、TSH 2.5 μIU/mL以下が望ましいとするガイドラインもある
  • 甲状腺機能低下症は、内服治療で管理可能な場合が多い

AMH(抗ミュラー管ホルモン)

卵巣に残っている卵子の数の目安を知るための検査です。詳しくはAMH検査の記事で解説しています。

結果の見方の注意点

ホルモンの「正常範囲」は検査機関や測定方法によって異なります。ここに記載した数値はあくまで一般的な目安であり、結果の解釈は必ず主治医と一緒に行ってください

また、ホルモン値は体調やストレス、睡眠などの影響を受けて変動することがあります。1回の結果だけで判断せず、必要に応じて再検査を行うこともあります。

異常値が出た場合の次のステップ

ホルモン検査で基準値から外れた結果が出ると不安になることがありますが、異常値=治療不可能ということではありません。多くの場合、原因に応じた治療法が存在します。

  • FSH高値 → AMH、AFCと合わせて卵巣予備能を総合評価し、治療方針を相談
  • LH/FSH比が高い → PCOSの精密検査へ
  • P4低値 → 黄体ホルモン補充療法の検討
  • PRL高値 → カベルゴリンなどの内服治療で管理できることが多い
  • TSH異常 → 甲状腺専門医との連携、レボチロキシンの内服など

男性のホルモン検査

不妊検査では、男性側のホルモン検査が行われることもあります。特に精液検査で異常が見つかった場合に追加されることが一般的です。

  • テストステロン:精子の産生に関わる男性ホルモン
  • FSH・LH:精巣の機能を評価する指標
  • PRL:高値の場合、性機能や精子産生に影響することがある

男性のホルモン検査は泌尿器科や男性不妊外来で受けることができます。パートナーと一緒に検査を受けることで、二人に合った治療方針を立てやすくなります。

結果を見て一喜一憂しすぎないために

ホルモン検査の結果はあくまで「今の状態を知る」ための材料です。数値が基準値から外れていても、それがすぐに深刻な問題を意味するとは限りません。

検査結果を持ち帰ってインターネットで調べたくなる気持ちはよく分かりますが、ネット上の情報は個々の状況に当てはまらないことも多いものです。不安なことがあれば、次の受診時に主治医に質問をまとめて聞いてみてください。質問メモを持参すると、聞きたいことを漏れなく確認できます。

パートナーの方へ:検査結果の説明を一緒に聞くことで、状況を共有しやすくなります。可能であれば、結果説明の日に同席するか、帰宅後に内容を共有する時間を作ってみてください。

検査項目まとめ一覧

  • FSH — 卵巣予備能の指標(月経期に測定)
  • LH — 排卵のトリガー、PCOS判定の参考(月経期・排卵期に測定)
  • E2 — 卵胞の成熟度(月経期・排卵期に測定)
  • P4 — 排卵確認・黄体機能の評価(黄体期に測定)
  • PRL — 排卵抑制の有無(月経期に測定)
  • TSH — 甲状腺機能(月経期に測定)
  • AMH — 卵巣予備能の目安(いつでも測定可能)

基礎体温との併用については基礎体温の記事を、不妊の原因全般については不妊の原因は男女半々の記事もご覧ください。