精子回収術とは
精子回収術は、射出した精液に精子が見つからない(無精子症)場合に、精巣や精巣上体から直接精子を取り出す手術です。回収した精子は凍結保存し、顕微授精(ICSI)に使用します。
「手術」と聞くと身構えるかもしれませんが、日帰り〜2泊程度で終わるものがほとんどです。この記事では、各術式の特徴と選び方を整理します。
術式の種類と特徴
TESE(精巣内精子回収術)
精巣の組織を少量切除し、その中から精子を探す方法です。
- 対象:主に閉塞性無精子症の方
- 精子回収率:閉塞性の場合、ほぼ100%
- 手術時間:30分〜1時間程度
- 麻酔:局所麻酔または全身麻酔
- 入院:日帰り〜1泊
micro-TESE(顕微鏡下精巣内精子回収術)
手術用顕微鏡(15〜25倍)で精巣内を観察し、精子が作られている可能性のある精細管(太くて白い精細管)を選んで採取する方法です。
- 対象:主に非閉塞性無精子症の方
- 精子回収率:約30〜50%(施設の経験や患者の状態により異なる)
- 手術時間:2〜4時間程度
- 麻酔:全身麻酔
- 入院:1〜2泊
- 利点:通常のTESEより精巣へのダメージが少なく、精子を見つけやすい
MESA(顕微鏡下精巣上体精子回収術)
精巣上体(精巣の横にある組織)から精子を回収する方法です。
- 対象:閉塞性無精子症で、精巣上体に精子が溜まっている場合
- 精子回収率:ほぼ100%
- 手術時間:1〜2時間程度
- 利点:精巣そのものを切開しないため、ダメージが少ない
- 実施:閉塞部位が精巣上体にある場合に限られる
手術前の準備
- 事前のホルモン検査、染色体検査、感染症検査が必要
- 非閉塞性の場合、ホルモン療法(hCG、クロミフェン等)で精子産生を促してから手術を行う施設もある
- パートナーの採卵スケジュールと合わせて手術日を決めることが多い(精子を新鮮な状態で使う場合)
- 手術当日の食事制限(全身麻酔の場合)
手術後の過ごし方
- 当日〜翌日:安静に過ごす。陰嚢の腫れや痛みが出ることがある
- 1週間程度:重い物を持つ、激しい運動は避ける
- 2週間程度:日常生活に復帰できることが多い
- 性行為:医師の指示に従う(通常2〜4週間後から)
- 鎮痛剤:処方された痛み止めを使用。市販薬で対応できる程度の痛みがほとんど
精子が見つからなかった場合
micro-TESEでも精子が見つからない場合があります。この結果を受け止めるのは、大きな心理的負担です。
手術を受けたことは「できることをやった」という意味で、前に進むためのステップです。結果に関わらず、その決断を大切にしてください。
精子が見つからなかった場合の選択肢については、提供精子の記事や養子縁組の記事をご参照ください。
費用の目安
- TESE:10万〜20万円程度(保険適用の場合。3割負担)
- micro-TESE:20万〜50万円程度(自費の場合。先進医療として保険併用可能な施設も)
- MESA:15万〜30万円程度(施設により異なる)
- 精子凍結:初回凍結料3万〜5万円程度+年間保管料1万〜3万円程度
高額療養費制度の対象になる場合があります。事前に限度額適用認定証を取得しておくと安心です。
パートナーの方へ
精子回収術の手術日には、可能であれば付き添いを検討してください。全身麻酔の場合、術後に一人で帰宅するのは難しいことがあります。
- 手術前の不安に寄り添う — 「一緒に乗り越えよう」と伝える
- 術後の家事やサポートを事前に計画しておく
- 結果が出るまでの期間(精子の有無の最終結果が後日になることも)、一緒に待つ姿勢
この記事のポイント
- TESE/MESAは閉塞性、micro-TESEは非閉塞性の無精子症に主に用いられる
- micro-TESEの精子回収率は約30〜50%
- 日帰り〜2泊程度の手術。回復は通常2週間程度
- 精子が見つからなかった場合も、次の選択肢はある
無精子症の全体像は無精子症の記事を、男性不妊の基礎知識は男性不妊の記事をご参照ください。
出典
- 日本泌尿器科学会「男性不妊症診療ガイドライン」
- 日本生殖医学会「生殖医療の必修知識」
